【施術例】過去に怪我した前足をかばう6歳サモエド
名前:うめちゃん
年齢:6歳
お客さまのお悩み
- 左前足を数年前に怪我(柵に手が引っかかった)
- 同じく左前足を去年ねんざ
- 最近、左前足のびっこが目立つ
- 後ろ足の爪を擦る音がする
- ほかのサモエドと比べて後ろ足の筋肉が少ない気がする
施術前の状態
- 意外とコリは左右差が少ない
- 左もも裏に一番気になる強いコリ
- おしりを大きく左右に振っている
- 膝が曲げにくそう
- コリではなく「力み」が強い
なぜこの状態になったか
うめちゃんの上半身のコリは意外と左右差がなく、特に予想していた胸まわりのコリがありませんでした。
強いコリがあったのは、「もも裏」「前もも」「お尻」でした。
下半身はお尻に丸みがあり、骨盤の後屈が見られました。
骨盤が後屈した理由は、ケガによる重心バランスの変化も考えられますが、加齢による筋力低下や、普段の生活スタイルや体質なども原因として考えられるため特定は難しいです。(全部が原因かもしれません)
骨盤が後屈すると後ろ足を前に出す動作が苦手になり、爪をこすることが多くなります。それを防ぐためにお尻や腰をふって狭くなった可動域をカバーします。うめちゃんの歩き方には、この動きが見られました。
後ろ足の筋肉量は、飼い主さんが気にされていた通り、年齢のわりにはやや少ないかもという印象でした。
骨盤が後屈すると歩幅が狭くなり、本来使うべき筋肉が使われなくなったり、本来使うべきでない筋肉に負荷がかかることがあります。「もも裏」「前もも」「お尻」のコリはその証拠であると言えます。
ほぐし始めて気づいたのが、横倒しに寝た姿勢で施術を受けてくれたにもかかわらず、全身に必要以上に力を込めており、力が抜けない状態が癖になっていそうだったことです。脱力したら奥のコリに触れるようになるのですが、一度立ち上がってまた寝そべると、また全身に力が入っていました。
これは人間への施術中でもよくある、無意識に「力んでいる状態」です。(人間が寝ている間に歯ぎしりしてしまうようなものです)
ケガの影響で崩れた体のバランスを取ろうとする動作(かばう動作)を日常的にしていることで、無意識のうちに必要以上の力が入りやすいのかもしれません。
前腕(足首あたり)はこの「力み」が強く現れている個所のひとつでした。
強張っている状態は柔軟性がないため、負荷がかると衝撃を逃がせず、痛めやすくなります。
同じ個所をケガしたり痛めやすい理由のひとつなのではないかと推測しました。
コリがあった部分
◯もも裏
◯前もも
◯おしり
施術結果
座り姿勢の比較
【チェックポイント】
・背中の丸み
・お尻の丸み(しっぽの巻き込み具合)
・前足と後ろ足の距離(画像三角形のエリア)
・膝の向き
・つま先の向き
施術前は膝とつま先が外を向いていました。
骨盤の角度が改善されると、股関節と膝が曲がりやすくなり、膝がきれいに折りたためるようになります。
お座りを横から見たとき前足と後ろ足がつくる画像の三角形エリアが狭くなりました。
これは後ろ足が折りたためていることのほかに、本レポートではあまり触れていませんが、肩甲骨まわりの力みをほぐしたことで前足を後ろに引けるようになったためです。
歩幅の比較
後ろ足を後ろに蹴り切る際の、体重が離れる瞬間の位置を切り取った比較です。
【施術前】
股関節と膝が伸び切らないため、後ろまで蹴り切れておらず、歩幅が狭い状態でした。
【施術後】
股関節と膝が伸びやすくなったため、後ろまで蹴り切れています。
まとめ
ケアの方針としては、「骨盤の角度を整えることで後ろ足を使いやすくする」をおすすめします。
今回の施術では主に「もも裏」と「前もも」をほぐしたことで膝が曲がりやすくなり、骨盤の角度が改善しました。
骨盤の後屈が改善すれば、後ろ足の歩幅が広がり、筋肉が正しく使えれば衰え防止になります。
膝がちゃんと曲がりお尻を振らなくても後ろ足を前に出せるようになれば、爪をこすりません。
とはいえ言葉が通じない以上、かばう動きの癖そのものは続くと思われます。
負荷がかかりやすい部分(まずはもも裏&前もも)を引き続きケアをお願いします。
続けてほしいセルフケア
・もも裏
・前もも
・おしり(できれば)
骨盤の角度の見守りをお願いいたします!
前述の「座り姿勢の比較」のようにお座りを真横から撮影して、①お尻の丸み②膝の折りたたみ具合③前足の接地位置を観察して、骨盤の角度がまた後屈してきたと感じたら、後ろ足を多めにケアしてあげてください。
今は下半身に負荷がかかっているようですが、そのうち前足側にも負荷がかかる可能性があります。
余裕があれば胸まわりに硬さが現れていないかも、見守っていただけたらうれしいです。