犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は整体で治せるの?

こんにちは、ナナカラケアです。
当サイトでは、犬の筋肉を中心に体のケアに関する情報をお伝えしています。

うちの子、パテラなんです。整体で治せますか?
パテラ(膝蓋骨脱臼)は、犬の整体師として活動している中で、最も多くいただくご相談です。
この記事はこんな飼い主さんにおすすめです。
- 整体で治るなら試したい
- 手術までは考えていないけれど、放置するのは怖い
- 歩き方の違和感や片足ケンケンが気になる
- 経過観察と言われたけど不安
- 予防や筋肉ケアに興味がある
なお、パテラ(patella)は本来「膝蓋骨(膝のお皿)」を指す医学用語です。
ですが、獣医さんや飼い主さんの間では「パテラ」という通称で呼ばれていることが多いため、本記事では「パテラ=膝蓋骨脱臼」として解説しています。
結論:整体でパテラは「治せません」
最初に大事なことをお伝えします。
整体は医療行為ではありません。
パテラそのものを「治す」ことはできません。
整体でできるのは、
悪化させないためのサポートです。
- 膝をかばうことで起きる体のゆがみを防ぐ
- 筋肉の衰えを防ぐ
- 負担が集中する部位を守る
- 膝が曲げ伸ばししやすい状態をつくる
といった内容で、パテラの悪化防止や、パテラとうまく付き合っていくお手伝いを行います。
本当に怖いのは、膝ではなく「後ろ足の筋肉の衰え」
パテラと聞くと、どうしても「膝」に意識が向きます。
ですが犬の整体師目線で見ると、パテラで最も注意したいポイントは、膝そのものではありません。その後に起こる体の変化。パテラから始まる負の連鎖です。
本当に注意したい、体の使い方が変わっていく様子を、段階ごとに見ていきましょう。
【第一段階】膝を使わない歩き方が始まる
お皿がずれると、犬は違和感を覚えます。
痛みが強くなくても、「なんか嫌だな」という不快感はあります。
この状態が続くと、犬は膝を曲げ伸ばししないようになります。
- できるだけ膝を使わない
- 膝を伸ばしたまま歩きはじめる
- 負担の少ない歩き方を探しはじめる
- 散歩中、爪をこするような音がする
- つま先の出血や、爪が削れた形跡がある
犬は賢いので、自分なりに「楽に歩ける方法」を探すのです。
この段階では、まだ見た目の変化は小さいこともあります。
まだ「膝を曲げない歩き方の研究段階」のため、つま先を怪我するといったサインが現れることもあります。
【第二段階】歩き方に癖がつく
この頃になると、以下のような動作として現れます。
- お尻をふる
- 腰をふる
- 跳ねるように歩く
- 歩幅が小さくちょこちょこ歩く
犬は歩く時、膝を曲げながら後ろ足を前に出します。
そうしなければ、つま先を地面に擦ってしまうからです。
しかしパテラの犬は膝を曲げようとしません。
膝を曲げずに歩くために、お尻や腰を一瞬振って持ち上げたり、ジャンプしながら歩くといった、体の使い方の悪い癖ができてしまうのです。
「楽な歩き方」を覚えてしまうと、その歩き方が固定されます。
「その歩き方は良くないよ」と言葉で伝えられないので、犬が「これでいい」と思ってしまっていたら、修正は難しくなります。
【第三段階】一部の筋肉に過負荷がかかる
本来、犬が歩くためには、多種類の筋肉が使われます。
しかし膝を曲げない歩き方は、本来使うべき筋肉を使わず、一部の筋肉ばかり酷使するようになります。
腰やお尻をふる犬は、お尻や足の側面の筋肉が。
跳ねるように歩く犬は、足の前側やふくらはぎが。
体の数カ所に強いコリができ始めるのが、この段階です。
次第に、頻繁に使う筋肉と、あまり使わない筋肉の差が大きくなっていきます。
そして使わなくなる可能性の高い筋肉が、太ももの裏の筋肉(ハムストリング)です。
犬は、もも裏の筋肉から衰える場合が多く見られます。
膝をかばう歩き方のせいで、ただでさえ衰えやすい後ろ足の筋肉を使う頻度が下がってしまうのです。
【第四段階】姿勢が歪む
強いコリの正体は、縮んで硬くなった筋肉です。
筋肉は、骨と骨を繋いでいます。
頻繁に使われる筋肉が硬くなると、骨と骨の距離が近くなります。
つまり、姿勢が歪んでいくのです。
また、筋肉が衰えることでも姿勢は歪みます。
以下は、姿勢の歪みの例です。
- 背中が丸くなる
- お尻が丸くなり、しっぽが下がる
- 後ろ足の歩幅が狭くなる
- 筋肉量に左右差が出てくる
- 足を開いて立つようになる
【第五段階】後ろ足に体重をかけなくなる
膝を使わない歩き方は、だんだん後ろ足を使わない歩き方になっていきます。
後ろ足に体重をかけない分、前足に体重をかけるようになります。
その結果、後ろ足の筋肉はますます使われなくなり、筋肉がさらに落ち始めます。
太ももの裏の筋肉(ハムストリング)が弱ると、見られる状態が以下です。
- 後ろ足が細くなる
- 後ろ足が震える
- 散歩で歩きたがらない
- 背中がさらに丸くなる
- 頭が下がる
- ふんばるポーズを維持できず尻餅をつく
- 方向転換をしようとして転ぶ
- ドスンと座る
- お姉さん座り
筋肉が衰えるとさらに姿勢が歪み、もっと衰えが加速する、という負の連鎖が発生してしまうのです。
パテラは、後ろ足の衰えに繋がる
上記の症状は、どんな老犬にも起こる未来です。
しかしパテラによる癖は、これらの未来を近づける要因になりやすいことは、ご理解いただけたでしょうか。
筋肉は全体でつながり、影響し合います。
膝だけの問題では終わりません。
「パテラ=膝のトラブル」と思われやすいですが、パテラが「後ろ足の衰え」に繋がっていることは、あまり知られていません。
まだグレードが低くても、早めにケアを始めることで、後ろ足の筋肉が衰える未来を遠ざけることができるのです。
歩き方を「直す」ではなく「守る」という考え方
ここまでの話を聞いた飼い主さんはこう思うかもしれません。

悪い歩き方の癖を、直せばいいってこと?
でも、現実的に考えると、歩き方そのものを変えるのはとても難しいのです。
犬は言葉で説明できません。
「膝をもっと曲げてね」「後ろ足に体重を乗せてね」と伝えることはできません。
その歩き方は、その子なりに「楽だから」選ばれています。
歩けている限りその動きは固定されやすいのは、【第二段階】の説明でお話ししました。
人間で例えると、つい無意識に足を組んだり、お姉さん座りをしてしまう飼い主さんもいるのではないでしょうか。
あれらの姿勢は、つい「楽だから」してしまう行動のひとつです。
その癖を直そうとするのは、難しそうに感じられます。
また、多くのワンちゃんは、【第五段階】、早くても【第四段階】で整体を利用します。
サインが小さすぎて、気づけないからです。
つまりここで伝えたいことは「悪い癖を直そうとしない」という考え方です。
この子は、こう歩く
例えば、
・右だけパテラ(グレード3)
・跳ねるように軽快に歩く
・床がフローリング
・嬉しいとジャンプする
・体重3kg
・11歳のトイプードル
その歩き方には必ず「負荷が集中する筋肉」があります。
この例だと、「ふくらはぎ」に強いコリがある可能性が高いです。
このようにその子の癖や特徴がわかっていれば、今現在どこが疲れていそうか、今後どのように負荷が増えていくかも推測できます。
考え方はシンプルです。
うちの子の歩き方なら…
→ ここに負担がかかりやすい
→ だからそこをケアする
疲れやすい筋肉がわかっているなら、その子の特徴に合わせたケアをすればいい。
歩き方を変えさせるのではなく、
その歩き方で壊れない体をつくる。
その歩き方を続けられる体をつくる。
特に年齢を重ねたワンちゃんの場合、これが現実的なアプローチです。
(中には、筋トレによって使える筋肉が増え、自然に歩き方が改善される場合もあるため、私の施術では筋トレもセットでお伝えすることもあります)
整体でできること
整体で行うのは、過負荷により硬くなった筋肉を柔らかくすることです。
どの筋肉にどのくらい負荷がかかるかは、ワンちゃんによって違います。
● 使いすぎている筋肉をゆるめる
膝をかばって頑張っている腰やお尻、前足の緊張を整えます。
姿勢のゆがみを防ぎます。
● 前足への過負荷を減らす
後ろ足を使わなくなると、前足に頼るようになります。
その結果、手首や肩に負担が集中し怪我をしやすくなります。
その予防を行います。
● 膝を曲げやすくする
膝の曲げやすさには、膝だけでなく股関節や足首など、他の関節の柔軟性も影響します。
関連筋肉をほぐすことで、膝を曲げやすくします。
● 膝を支える筋肉の柔軟性を保つ
膝蓋骨の位置をコントロールしている筋肉の柔らかさを取り戻し、お皿が外れにくい環境をつくります。
できるケアは、その子の状態によって変わります。
筋肉が十分に残っている段階と、かなり落ちている段階では、目標も変わります。
ワンちゃんの体がどんな状態か把握するためにも、ぜひ一度、プロにご相談ください。
まとめ|パテラとの向き合い方
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、整体で治すことはできません。
ですが、放置するしかない問題でもありません。
犬の整体はパテラの犬にとって以下のようなサポートを得意としています。
- 筋肉の衰えを防ぐ
- 姿勢の崩れを止める
- 体の負担を分散する
- 悪循環を断ち切る
そして、パテラで本当に怖いのは、「お皿が外れること」そのものではありません。
膝をかばう
↓
歩き方が変わる
↓
一部の筋肉に負担が集中する
↓
姿勢が崩れる
↓
後ろ足の筋肉が衰える
↓
もっと姿勢が崩れる
↓
もっと後ろ足の筋肉が衰える
という負の連鎖です。
この流れを止められるかどうかが、将来の歩き方を左右します。
パテラは「手術する」か「何もしない」かの二択ではありません。
その間に、「守る」という選択肢があります。
愛犬が今どの段階にいるのか。
後ろ足はどのくらい使えている状態か。
どこをケアすればいいか。
そこを知ることが
まだまだ続く犬生の、歩き方を守る第一歩になります。

