【施術例】爪をこすって歩く音がする12歳プードル
お名前:かのんちゃん
年齢:12歳
お客さまのお悩み
・お散歩中、たまに爪をこするような音がする
・ヘルニアで動けなかった時期があり心配
・歩く速度が遅くなった
施術前の状態
・背中に丸みがある
・後ろ足を前に出す瞬間に腰を丸めて歩幅を作っている
・背中~腰が硬い
・前足、後ろ足ともに振り出す動作が大きい(空転している)
なぜこの状態になったか
かのんちゃんは後ろ足を前に出す動作が苦手のようです。犬は後ろ足を前に出すとき、膝を曲げないとつま先を擦ってしまいます。この日は確認できませんでしたが、「爪を擦る音」は膝の曲がりが浅くなったとき、後ろ足を前に出した瞬間に発生していると予想しました。
前足・後ろ足ともに空転して動かしにくくなっているのは、背中が丸くなったことが要因です。背中が丸くなる姿勢は、後ろ足の衰えにより前足荷重になることではじまることが多いです。
背中が丸まる流れ
①後ろ足の筋肉が衰える
②前足重心が強まる
③前足と後ろ足の接地位置の距離が近くなる
④背中が丸まる
かのんちゃんはお散歩が大好きとのことで、後ろ足にはたくさん筋肉がありました。でも力んでいるような硬さがあり、使いにくい状態でした。筋肉量が多いとはいえ若い頃よりは衰えており、体重の軽い犬種であることから、加齢による腰の丸みは避けられない変化だったと思われます。過去にヘルニアも経験しているとのことでした。
つま先をこすらないよう、膝が曲がりやすい状態を保つためには、前足重心が強まることで起きる胸・肩甲骨まわりの筋肉のこりを解消することが重要です。
・肩甲骨の可動域を広げる
・力んでいる後ろ足の筋肉を使いやすい状態にする
以上を目標に施術しました。
重点的にほぐした筋肉
上腕三頭筋
起始:肩甲骨と上腕骨
終止:肘
作用:肩関節の屈曲、肘関節の伸展
前足にかかる体重と重力に対抗して、姿勢を保つ役割をする筋肉です。同じ役割の胸の筋肉はそれほどこりがない状態だったのに対し、上腕三頭筋が左右ともに強くこり固まっていました。この筋肉が硬いと肩甲骨の角度が固定され、姿勢が崩れる原因にもなります。
殿筋
立ち上がりや方向転換、揺れに耐えるときなどに姿勢を維持する筋肉です。年齢を重ねると衰えやすい筋肉のひとつです。かのんちゃんはこの殿筋がしっかり残っていましたが、かなり硬くなっていたことと、セルフケアしにくい部分だったことから優先的にほぐしました。
もも裏
こちらはこりというより、力みでした。以前のように体が使えないことを感じたかのんちゃんが、今まで以上に力を込めて体を動かそうとした結果、必要以上に力を入れる状態が癖になっているように感じました。少し指で圧を入れただけで硬さがほぐれたため、まだ力んでいただけのようです。この状態が続いてしまうとこりになってしまうので、ケアを続けたい部分です。
施術結果
立ち姿勢の変化
①足の接地位置が変化しました
前足と後ろ足の距離が広がったことが確認できます。肩甲骨の角度が整ったことで骨盤の角度も連動して整ったためです。
②背中の曲がり方が変化しました
首の付け根~丸まりの開始位置までのラインがなだらかになっています。また、丸まりのピークが後ろに位置しました。
③背中が柔らかくなった
写真では分かりにくいですが、首から腰にかけての硬さが改善しました。(首のしわの形でちょっと見て取れます)肩甲骨周辺がほぐれたことで菱形筋の張りが改善しています。
歩き方の変化
▼施術前
▼施術後
膝の曲がる角度が大きく変化しました。
施術後は、後ろ足を前に出す瞬間に、膝を深く曲げられているのが分かると思います。動画では確認できませんでしたが、もも裏の柔軟性を取り戻したことで蹴り出しの力も強くなっていると思われます。
前足の可動域が広がっています。施術後は、肩が動いているのがはっきり見えます。肩甲骨周りの筋肉をほぐしたことで首回りの筋肉もほぐれ、肩甲骨の可動域が大幅にアップしたようです。
(より具体的に言うと、直接ほぐしたわけではない菱形筋が結果的にほぐれたことで肩甲骨の上部が後引しやすくなった)
背中の丸まりは目に見えるほどの改善!とはいきませんでしたが、少しでも改善したということは、これ以上の悪化は食い止められている状態ということです。ケアを続けることで加齢による背中の丸まりを遅くする効果が期待できますし、さらに高齢になったころに残っている筋肉量も違うはずです。
元気に歩けているからまだ大丈夫、と見逃さず、この時点で整体を利用してくださったことを嬉しく思います!
続けてほしいセルフケア
上腕三頭筋、もも裏、浅胸筋(わきの下)